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途中、トモヤは一度だけ目を覚ました。時間は分からない。
けどカーテンは暗いままで、まだ朝といわれる時間帯ではないことだけが分かった。
俺が寝ていると思ったんだろう。トモヤは俺の胸で、必死に息を殺して泣いていた。
髪を撫でると、トモヤは驚いたように顔を上げた。
「ごめっ、ヒロ……。起こした……?」
「いや……。ずっと起きてたから」
「寝れないの……?」
「ん。今日、昼寝しすぎて、全然寝れねぇーわ」
「そか……。じゃ、しりとりでも……する?」
「んなもんしねぇーよ。つか、お前はちゃんと寝なさい」
後頭部を掴み、トモヤの顔を胸に押し付けた。
「ごめんね……、ヒロ。おれ、泣いてばっかりで……」
「お前、なんのために俺ここに居ると思ってんの? 好きなだけ泣きゃいいのよ」
「うん……、ありがと……。ありがと、ヒロ……。あり、が……っ……――」
涙で語尾が潰れた。
胸の上で拳が握られ、トモヤの指に巻き取られたトレーナーが首と脇を圧迫した。
「っ、ヒロ……。おれ……、さびしっ……よ……。さびし……っ……よ……」
咄嗟にトモヤを抱き締めた。
「っ……、ごめっ……ね……。ごめ……ね……。ヒロ……、が……、ヒロが……、いっしょに居てくれるのに……、っ、おれ……、さびし……よ……。さび……っ……」
ただ強く、強く、力任せにトモヤを抱き締めた。
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