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「あ、カナトさんのその時計、カッコイイですねー」
男は嬉しそうに俺の左手首に視線を落とした。
勿論、見せつけているつもりはないが、血の付いたジャケットの袖をまくったことで、腕時計が丸見えになっていた。
「時計、興味あんの?」
「はい。死ぬまでには一個くらい、機械式時計、買いたいなー……って、思ってます」
「死ぬまでって、大げさだな」
「だって、高いじゃないですかー」
へらへら笑う男が欲しいと言ったブランド名は、少しでも時計に興味のある人間でなければ、おそらく知らないであろうブランドだった。
少なくとも、俺が働いていたホストクラブに来ていた女たちは知らないだろう。
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