いまを生きる

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 いまに生きるということは、人生を投げやりに生きることじゃない。むしろこの人生を味わいつくす、ということだ。  ありもしない将来について思考を巡らせて、なにが“現実的”なんだろう。そのどこが真面目なんだろう。しか存在しないのに。  重い身体を横たえながら、ぼくはそんな風に考えた。  とたんに気が楽になった。ぼくに必要なのは不安に向き合う強さじゃなく、“いま”と正面から対峙する強さだったんだ。ぼくは気づく。いま感じている幸せ、苦しみ、そのすべてから逃げずに向き合う。それが本当の強さなんだ。  いまコロナでつらいのなら、素直に身体を休めればいい。もしこの後重い症状が出たとしたら、その時は適切に対処すればいい。もし体調がよくなれば、それを心から喜べばいい。元気でいられることの幸せを味わえばいい。  過去も未来も存在しない。  そんなものは、もしかしたら幻想に過ぎないのかもしれない。  ぼくはこれまで、ありもしない未来への不安や過去への憧憬に心を奪われてた。現実に存在する“いま”を、なんとなく通り過ぎるように生きてきた。  ぼくはどれだけ、幻想に縛られてきたんだろう。
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