ダイナー

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ダイナー

 ダイナーを描いた絵画がある。  アメリカの画家によるものだ。  それがなんとも不思議な魅力を放った絵で、一度見たら忘れられない。有名な絵だからきっと、目にしたことがある人も多いと思う。ハリウッド映画やなんかでも、その絵画に意図的に似せた外観を持つダイナーが登場したりする。そんなシーンがあると、「あの絵だ」と瞬時にわかる。  深夜の店。一人の店主と、数人の客(たしか二人か三人)が店内にいる。その様子を俯瞰から、どこか冷めたような目線で描いた絵。それがあまりにシンプルに描かれているからどこか現実感がなく、むしろシュールな印象さえある。  ぼくは最近、その絵画を描いた画家の名を知った。絵は好きなのに、画家は知らなかった。  エドワード・ホッパーという画家だ。  ぼくはダイナーが好きだ。  絵画の中のダイナー、映画の中のダイナー、五十年代のアメリカのダイナー、都内にあるダイナー……。とにかく、ダイナーならなんでもいい。
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