とけない謎

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 探偵の知人が固形の謎を持ってきた。手のひら大で、くすんだ銀色をしている。彼曰く、依頼を受けた事件の現場に不可解な点があるという。それを考えている途中、あくびをしたら口から出てきたそうだ。 「骨董品店ではこういうものも扱うのだろう?」 私は否定しながらも、前例のない代物には心惹かれる(たち)なので、この謎を預かることにした。謎は本来「解き明かす」ものだが、固体の謎は「とける」のか、毎日観察した。  四日後、知人から連絡が来た。 「先日言ってた事件現場の件、解決したよ。胃薬があったのは、依頼人が被害者のために買って渡し忘れたらしい」 消化不良ならぬ昇華不良。窓際に置かれた謎の周りに、銀色の(もや)がかすかに漂っていた。
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