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森君とここで、出会った日。
変わる足音、さまになってきたフォーム。
私を見て、ぱっと顔が明るくなって「おはよう」と言うときの、細くなる彼の目。
昨日のがんばり。
私は見てきた。
だから、思わず大きな声が出た。
「うん、すごいよ!」
森君は笑顔になった。本当に、それは晴れ晴れとした笑顔だった。
「よかった。俺、昨日皆に褒められたのも嬉しかったけど……習慣にして、伊藤さんに『すごいよ』って言ってもらいたかったんだ」
「え」
「じゃ、また」
規則正しい足音が遠ざかっていく。
振り向くと彼の耳が赤く染まっていた。
ジョンが一声、「わふっ」と軽く吠えた。
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