34人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
彼の後ろ姿
ふぁあ。
私はあくびを隠す。教室の前の方には今朝会ったクラスメイトが座っている。真面目に授業を聞いている森君。背筋がのびててえらい、と思う。
不思議な気分だった。
森君は学級委員で成績もよくて、でも走る印象はなかった。
あれは本当に森君だったんだろうか。
確かめようにも、そもそも普段あんまり話す仲じゃない。
「今朝会ったね」なんて会話もなく、昨日と同じ日常は過ぎていった。
翌朝、もしかしたらと思ってちょっとだけ早く起きた。ぼさぼさ頭にくしを通し、よれよれのTシャツをマシなものに着替える。
玄関を出て、庭の犬小屋へ。
「ジョン、昨日森君に会ったよね?
覚えてる?」
リードをつける間、話しかけてみた。ジョンはちらり、と私を見上げて、すたすたと歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!