彼の後ろ姿

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彼の後ろ姿

 ふぁあ。  私はあくびを隠す。教室の前の方には今朝会ったクラスメイトが座っている。真面目に授業を聞いている森君。背筋がのびててえらい、と思う。  不思議な気分だった。  森君は学級委員で成績もよくて、でも走る印象はなかった。  あれは本当に森君だったんだろうか。  確かめようにも、そもそも普段あんまり話す仲じゃない。  「今朝会ったね」なんて会話もなく、昨日と同じ日常は過ぎていった。  翌朝、もしかしたらと思ってちょっとだけ早く起きた。ぼさぼさ頭にくしを通し、よれよれのTシャツをマシなものに着替える。  玄関を出て、庭の犬小屋へ。 「ジョン、昨日森君に会ったよね?  覚えてる?」  リードをつける間、話しかけてみた。ジョンはちらり、と私を見上げて、すたすたと歩き出した。
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