落胆

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落胆

 次の日、元気がない私をジョンが引っ張るように連れ出した。  電柱でジョンが立ち止まる。  今朝は少し寒い。「急に冷え込んできたから気をつけなさいよ」とお母さんが出かけに声をかけてくれたのを思い出す。長袖のパーカーを引っ張って指先まで隠した。  ジョンにもそろそろ、お散歩用の服を用意しなきゃ。ブルドッグは寒さが苦手だ。  はぁ、と息をつく。  もう秋が、その次は冬がくる。  体育大会は終わってしまった。  用を足したジョンが、私を見上げてくる。 「そんな顔したって、森君来ないよ。  ……行こ」  おすわりするジョンのロープを引っぱった時。  足音がした。  規則正しい、ジョギングの足音。
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