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本性
政務室に飛び込むように入ると力いっぱいドアを強く閉めたフツーノ。
王冠とローブを脱ぎ、銀の錫杖と合わせて机の上に置いた。
次に座り心地抜群の椅子に腰かけると、背もたれにのけ反り、目をつぶる。
そして、は~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっ!と長く息を吐いた。
そっと自分の手を胸に当てる、まだ拍動がバクバクと激しい。全く収まる様子がない。
フツーノの内なる想いが、我慢の限界を突破し爆発した。
「こ・・・こ・・・怖かったあ~!!どうしようどうしよう!!!絶対あの人たち怒ってるよね?こんな所に一人で来させられて、舐められない様にちょっと強がるだけのつもりだったのに!!」
「そうだったんですか⁉」
「うん!私ギガストロアじゃ、お庭の手入れと茶葉の管理してただけで政治なんて全く分かんないよ!なのに、ある日領主になれとか突然命令されて、訳も分からないままここに来たの!」
「側近とか護衛とか、秘書とかは?」
「それよ!普通一人でよこす?有り得ないでしょ!そういうのは全部、マイン領の人間を使えって言われたの!」
「なるほど、しかし先ほどのミカケ様の態度を見て、積極的に協力する者がいるかどうか」
「だよね?いや、本当に緊張して頭真っ白でさ!!それであんな風に暴走しちゃって・・・ああ・・・本当にゴメンって感じだよ」
「そっか、ミカケ様って本当は優しい人なんですね」
「いやいや私なんか・・・え?」
この部屋には私しかいない筈、さっきから相槌打ってくれてるの誰?
ようやく、当然の違和感に気づく。
椅子にのけ反ったまま叫んでいたフツーノは体を起こした。
一人の少年が目の前にいる。
「あんた誰?」
「ノーマ・ライズです。さっき挨拶しましたよ」
「なんでここにいるの?」
「すいません、先ほどのミカケ様の態度に腹が立ってしまって、一言言ってやろうと乗り込んできてしまいました」
「・・・今の話聞いてた?」
「聞いてたも何も、俺たち会話してましたけど」
「だよね~」
「はい」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーー!!」
フツーノの叫びで政務室は満たされた。
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