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「じゃあ私はブドウつながりということで、ワインにしておこうかしら」
「あ、確かに。赤っぽいけど、もとはブドウだから――」
なんとはなしに頭の中で、グラスの中に注がれたワインを思い浮かべた。
「ハサンの瞳の煌めきには、ワインは負けてしまうけどね」
マリカ様の反対の手が、優しく僕の頭を撫でる。たったそれだけのことなのに、ドキドキしていた心が落ち着きを取り戻す。そのおかげで、アイデアがひらめいた。
「それじゃあワインにたとえてくれたお礼に、僕からもプレゼントしていいですか?」
提案しながら立ち上がり、僕の頬に触れてるマリカ様の手を優しく掴んで、甲にキスを落とした。
「ハサン、もっとほしいわ」
とても小さな呟きだった。だけど彼女の呟きを遮るものはなにもなく、すんなり僕の耳に届いてしまった。
「マリカ、なにを――」
「わかってるくせに、そういうことを聞くの?」
もの欲しそうな感情を宿すマリカ様の色違いの瞳が、僕の中にあるモノを引きずり出す気がした。
「マリカが望むことなら、なんだってしてあげる。言って?」
「ハサンに、キスしてほしいわ」
切なげな面持ちで僕を見上げるマリカ様のケープの紐を外し、足元に放る。そして腰を落としながら、彼女の耳朶にキスをした。
「ぁあっ」
そのまま柔らかい耳朶を食み、ちゅくちゅく音を立てて吸いあげると、マリカ様のいい匂いが鼻に濃く香った。
「ハサン、くすぐったい……」
震える声が感じていることを表していたので、今度は細長い首筋に唇を押しつけた。しっとりした肌を味わうように、舌を這わせる。
年の離れた兄たちが物陰に隠れて、彼女と卑猥な行為に及んでいるのを、幼いころ垣間見ていた。まんまそれをしているだけなのだが、どうしたらマリカ様をもっと感じさせることができるのだろう。
細い腰を抱き寄せ、苦しくならない程度にマリカ様を抱きしめる。
「……もう終わりなの?」
マリカ様は、僕の胸元に頬を寄せて見上げる。もっとしてほしいと、熱のこもった視線を注がれたが――。
「これ以上は、もう駄目です。マリカもわかっているでしょ。僕がマリカを欲しがっていること」
カタチの変わった僕の下半身が、マリカ様の躰に確実に触れている。抱きしめ合えば、嫌でも伝わってしまうそれが恥ずかしい。
「大好きなハサンが私のことを欲しがっているなんて、すごく嬉しいわ」
笑いながらそこに手を伸ばし、服の上から撫でるように触られた。
「くっ!」
他人に触れられたのがはじめて――服の上からだというのに、痛いくらいにそこが張り詰める。
「触れてると伝わってくる。熱くて大きくて……私の中に挿れたらどうなるのかしら」
マリカ様のセリフは、我慢している理性を崩すキッカケになるには充分だった。触れられて感じるせいで、声が出ないようにしているのを知られたくなかったのもあり、見上げるマリカ様の唇に、自分の唇を押しつけるようにキスをした。
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