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☆☆彡.。
僕の首に両腕を回し、唇を押しつけていたマリカ様が先に顔を離した。両腕に力を込めて、僕ごとベッドの上に横たわる。倒れた衝撃でふわりと目の前に広がるマリカ様の白金髪がすごく綺麗で、思わず目を奪われた。
「綺麗だ……」
言いながら一房手に取り、キスを落とす。
「色素のない、ただの髪の毛なのに」
「なんの色にも染まっていないから、とても綺麗なんだ。僕の髪とは真逆」
「ハサンの黒髪の艶は、とても健康的に見えるわ。肌の色と同じね」
マリカ様は僕の真似をして、僕の髪の毛を手に取り、嬉しそうな顔で唇に押し当てる。
「僕はマリカの持つ淡い色のどれも大好き。とても目に優しい色ばかりだから。見てるだけで心が癒される」
「私は自分の色が嫌いよ。だって家族を不幸にしているんですもの」
悲しげに瞳を揺らしながら告げられたセリフに、僕は眉を顰めた。
「どうしてマリカのせいで、家族が不幸になる?」
「この国では女は16でお嫁に行くのに、私の妹は18でやっとお嫁に行けたの。弟は結婚相手も見つかっていない状態よ。私のような見た目の子どもが生まれる可能性があるせいで、皆敬遠しているわけ」
「そんな……。ちょっとだけ目立つだけじゃないか」
「それだけじゃない、体も弱いの。疲れやすくて、すぐに熱を出す。病弱な体はお金だってかかるでしょう?」
「マリカ――」
僕はかける言葉が見つからなかった。学のない僕がなにを言っても、すべて意味のないものになりそうな気がしたし、逆に彼女を傷つけるかもしれないと思ったら、おいそれとは口を開けそうになかった。
「だから健康的なハサンを見てるだけで、とても羨ましかった。私よりも年下なのにしっかりしていて、お店をちゃんと切り盛りしている姿を、実は遠くから見ていたの」
マリカ様の意外な言葉に目を見開く。
「僕を見ていた?」
「ええ。私の目には、キラキラしているように映ったわ。いつも笑顔を絶やさずに、お客様と話をしているハサンを見ているうちに、好きになってしまって……」
言いながら、恥ずかしそうに両手で顔を覆い隠す。
「マリカが僕を好きになったんだ」
「好きだと思ったら、ますますお店の敷居をまたぐことができなくなったの。弱り切った私を見たルーシアが、背中を押してくれたのよ。心残りのないようにしないと、絶対にあとから後悔しますよって、抱きしめながら言ってくれたわ」
「僕と初めて逢ったあの日、お貴族様らしく平然としていたから、そんなふうに好意を抱かれていたとは思ってもみませんでした」
あのときのことを脳裏で思い浮かべたら、マリカ様は両手で隠していた顔を晒して、どこかおかしそうに微笑む。
「それは、貴族としての嗜みよ。感情を表に出さないように、訓練しているもの。だけどすごくドキドキしていたの。あえて厚い生地のベールを被って、顔色が見えにくいように施したわ」
「僕には薄地の白いベールに見えました。だってその綺麗な瞳の色が、ちゃんと確認できましたよ」
「私の顔をじっと見たの?」
マリカ様はくすくす笑って、僕の頬を両手で包み込んだ。
「見るに決まってるじゃないですか。綺麗な人だなって。僕にない色を持ってるんだから」
「だったら今夜、ハサンの色を私に分けてちょうだい。貴方の色に染められたいわ」
頬を掴んだマリカ様の両手が、僕を引き寄せる。その力に抗わずに、そのままキスをかわした。触れるだけのキスから濃厚なキスに変わり、やがて互いの舌を絡ませるものになり――。
柔らかくてあたたかみのあるマリカ様の体を抱きしめながら、僕の色を奥深くに何度も刻み込んだのだった。
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