2.名前

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 無言でのっそりと俺を見やった戸本が、これまたのっそりと俺に顔を近づけた。 「何してんだよっ!」 戸本の顔面を押さえながら威嚇すると、負けじとグイグイと顔を近づけてくる。 「顔力分けてやろーと思って。」 「近い、近いっ!」 「そりゃそーだ。キスするんだから。」 「やーめーろっ!」 「なーんでよ?顔力注いでやるよー。」 「注げねーだろっ!」 「分かんねーよ、してみなきゃ。はい、おめめ閉じてー。」  グイグイくる戸本の顎をグイグイ押し上げる。ニヤニヤ笑っていた戸本が、ふと動きを止め、目を見開き、青ざめた。 「・・・どうした?戸本。」  振り向くと、そこには戸本の想い人、木原(きはら)さんが、見てはいけないものを見てしまった顔で立っていた。 「戸塚さん・・・。」  ・・・あー、本当だ。戸本、名前覚えてもらえてねーや。
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