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無言でのっそりと俺を見やった戸本が、これまたのっそりと俺に顔を近づけた。
「何してんだよっ!」
戸本の顔面を押さえながら威嚇すると、負けじとグイグイと顔を近づけてくる。
「顔力分けてやろーと思って。」
「近い、近いっ!」
「そりゃそーだ。キスするんだから。」
「やーめーろっ!」
「なーんでよ?顔力注いでやるよー。」
「注げねーだろっ!」
「分かんねーよ、してみなきゃ。はい、おめめ閉じてー。」
グイグイくる戸本の顎をグイグイ押し上げる。ニヤニヤ笑っていた戸本が、ふと動きを止め、目を見開き、青ざめた。
「・・・どうした?戸本。」
振り向くと、そこには戸本の想い人、木原さんが、見てはいけないものを見てしまった顔で立っていた。
「戸塚さん・・・。」
・・・あー、本当だ。戸本、名前覚えてもらえてねーや。
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