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「何がー?」
戸本が口を尖らすので、俺は呆れ顔をする。
「夕飯にホテルのケーキバイキングは胸やけ的にキモイ。36の男2人でホテルのケーキバイキングは視覚的にキモイ。戸本と2人でホテルのケーキバイキングは俺的にキモイ。」
戸本が首を捻って、しばし静止し、俺を見つめた。
「酷くね?俺とのお出かけキモイなんて。」
「”おでかけ”ゆーな。キモイ。」
「そうか?」
諦める気ゼロの敵を相手に、俺は白旗を上げることにした。溜息をついて立ち上がり、パソコンをシャットダウンする。
「飲み行こ。」
そう言って歩き出すと
「さすが田口。なんだかんだ言って、やっさしー。」
と戸本がスキップをしてついてきた。
「スキップやめろ。キモイ。」
「分かった。ツーステップにするわ。」
俺を追い抜き、トトン、トトン、とオフィスの廊下を進む同期の男を眺めながら、「行くのやめようかな。」と呟く。戸本が振り向き、トトン、トトンとステップを踏みながら
「ぜったい、行くくせにー。」
と投げキッスを寄越した。
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