1.かまって王

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「何がー?」  戸本が口を尖らすので、俺は呆れ顔をする。 「夕飯にホテルのケーキバイキングは胸やけ的にキモイ。36の男2人でホテルのケーキバイキングは視覚的にキモイ。戸本と2人でホテルのケーキバイキングは俺的にキモイ。」  戸本が首を捻って、しばし静止し、俺を見つめた。 「酷くね?俺とのお出かけキモイなんて。」 「”おでかけ”ゆーな。キモイ。」 「そうか?」  諦める気ゼロの敵を相手に、俺は白旗を上げることにした。溜息をついて立ち上がり、パソコンをシャットダウンする。 「飲み行こ。」 そう言って歩き出すと 「さすが田口。なんだかんだ言って、やっさしー。」 と戸本がスキップをしてついてきた。 「スキップやめろ。キモイ。」 「分かった。ツーステップにするわ。」 俺を追い抜き、トトン、トトン、とオフィスの廊下を進む同期の男を眺めながら、「行くのやめようかな。」と呟く。戸本が振り向き、トトン、トトンとステップを踏みながら 「ぜったい、行くくせにー。」 と投げキッスを寄越した。
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