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「相手。女。」
「セフレってこと?」
「ちげーわ。もう諦めて次へ行けってこと。戸本なら選び放題だろ?」
「うん。」
「うんって。」
「で、あの人を選んだ。」
「相手も戸本を選んでくれなきゃ意味ないだろ。」
「選んでくれるからって選んでない相手を選んだことにするのは虚しい。」
「選んでくれる相手の中から選ぶんだから選んでるだろ。」
「選んだことにするだけで選んではいない。」
突然、『どーでもいーな、この会話』という思いが沸き起こる。
「わりぃ、戸本。今、猛烈に面倒臭くなったわ。」
「うん。そんな顔してるな。顔に出しすぎだろ。田口、社会人として大丈夫?」
「お前に社会人の何が分かる?」
立ち上がって財布を取り出すと、戸本が俺を見上げた。
「帰んの?」
「うん。明日も仕事だし。戸本も帰ろ。」
「・・・うん。そーね。」
羨ましいくらい恵まれた容姿をして、羨ましいくらい女にモテる同期が、哀れなほどしょぼくれた様子で立ち上がる。
「もったいねーな、戸本。その顔力、使わねーなら俺にくれ。」
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