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 研修修了後初の当務日。朝の交代後に翔一は、整列している当務班員らの前で、喉の奥からこみ上げてくる熱いものを堪えながら挨拶した。高揚感と緊張感とが入り混じり、武者震いした。ようやく念願がかなった瞬間だった。  下番者からの申し送りが終わると、主要資器材の点検が始まる。ポンプ車、はしご車、指揮隊車、救急車等各配置車両積載資機材の員数、使用状況、個人装備品の確認等を行うのだ。  車庫内は、ポンプ車二台、救急車、指揮隊車、梯子車のエンジン音が交錯し、大声を出さないと聞き取れないほどの騒音となる。おまけに排気ガスが充満するのでむせ返る。  大声を出しながら救急車両の外観点検、前照灯、左右のウインカーの点灯状況を確認し終えた翔一は、ドアをスライドさせ後部座席に乗り込む。エタノールの臭いが鼻をついた。咳き込みそうになるのを堪えた。救急隊員としての実感が、じんわりと湧いてくる。翔一は目を閉じ大きく一回深呼吸をした。 「朝井よ、どうだい、気分は」  助手席から救急隊長の下田が振り向いた。  下田の名札には、名前の上に「救急救命士」と書かれている。  救急隊員と救急救命士は違う。
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