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「はい」と言おうとしたのだが、喉に何か詰まったような違和感があり、声がかすれた。慌てて咳払いを二三回し、もう一度「はい」と答えた。 「お母さん、何か病気でしたか?」  翔一は首を左右に二三回振った。 「わかりません、でも、いつも疲れたっては言ってました」 「歳はいくつかな」  表情を変えずに訊いてくる。隊長は、ボンベに細長い管をつないでいた。  電話で言ったろうにと思い、眉を寄せた。翔一は母を見ながら「確か三十八歳です」とぶっきらぼうに答えた。母はうずくまったまま動かない。  若い隊員は、おっさん隊員と二人でなにやら母に処置を施している。おっさんの手には、一メートルくらいのオレンジ色の分厚い板があった。  隊長は「わかりました」と頷いたあと、今度はおっさんに向かって「脳外科で選定、三十八歳女性、自宅で意識障害、レベルは二〇〇。既往症は不明」と指示した。  おっさんは「了解っ」と低いがはっきりした声で返事をし、オレンジ色の分厚い板を若い隊員に渡した。腰のポシェットからガラケーを取り出す。  若い隊員は、受け取ったオレンジ色の板を母の傍らに置いた。母はぐったりと横になっている。
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