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 高校生になったことで、少しでも家計の助けになればと自分はアルバイトを決めてきたが、反対された。あなたのすることは勉強なのだ、働くことではないと否定されたのだ。その時自分の中で何かがぷつんと切れた。その後のことは覚えていない。気がついたら母が倒れていた。 「そう」  隊長は聞き返すことなく、淡々と訊いていた。自分が話したことを全部医者たちに伝えるのかと思うと後悔しないでもなかったが、事実だからどうしようもない。警察に連れていかれても仕方がないなと覚悟した。  やるせなくなり、小さく溜息をつく。後悔先に立たず、懺悔する値打もない自分の行動だ。  ストレッチャーに乗っている母親の容態は、落ち着いたらしい。自分に背を向ける格好で横になっている。  母は、自分が五歳の時に離婚した。以来、女手ひとつで翔一を育ててきた。その疲れが積み重なった結果なのか。だとしたら、原因は自分にあるということだ。なんともやりきれないものが胸の中で渦巻く。  もうバイトの時間には間に合わない。今後しばらくは母の看病に専念しなくてはならないだろうから、やはり辞退しなくてはならないだろう。いや、そのまえにクビかな。初日から無断欠勤だものな。  溜息しか出てこない。  あれこれと考え、母を見つめているうちに視界が滲み、歪んできた。思わず天井を見上げる。目尻から熱いものがこぼれ、頬を伝った。
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