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 担任に相談したところ「救急隊員になるなら救急救命士だが、今は専門学校もある。しかし、救急隊員になるには、消防職員でなくてはならない。まずは消防職員になることが先だよ。そうすれば、救急救命士になるための研修費用は公費で受けることができる。一石二鳥だろ」と言ってくれた。  まず地方公務員試験問題集を買った。あれこれ欲張って勉強するよりも、とにかく問題 集を一冊、完璧にできるようにしようと思った。  筆記だけでなく体力試験もあるのだと知った。翔一は自転車通学をやめ、走って通うことにした。片道およそ四十分。慣れるまでそれほど時間はかからなかった。筋力トレーニングも並行して行った。ジムに通う余裕などない。自宅で腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワットなどをベースにし、ストレッチを組み合わせて行った。  体育の教師から「鉄棒もやっとけ、懸垂は必要と思うぞ、火災現場でロープとか壁際にブラ上がったままの消防隊員なんてかっこ悪いだろ」と言われ、鉄棒も取り入れた。  この教師の助言はズバリ的中した。体力試験は、一回を一分かける腕立て伏せを十回、それと鉄棒の懸垂をできる限りというものだった。  翔一は、体育教師に感謝した。  思いと努力が実り、高校三年生の秋、翔一は、消防職員採用試験の合格通知を受取った。
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