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 全寮制の消防学校で六ヶ月間にわたる初任教育をうけたのち、翔一は一の坂消防署へ配属された。その後三年の実務期間を経て、翔一は、念願の救急隊員となるための研修を修了した。  研修には、レスキュー隊員になるための救助研修や、建物の査察を行う予防研修などがあるが、希望すれば受けられるというものではなく、一年以上の実務経験を積んだうえで、選抜試験に合格しなければならないという条件がある。名目上は一年以上の実務経験とあるが、実際は三年以上の経験を積まないと、所属からの推薦は受けることが難しいのだ。  最初はとにかく消防隊の基本であるポンプ隊員としての経験を積んでほしいからだというのが本部の言い分らしいのだが、実際は、消防職員にも高齢化の波が押し寄せており、若い人材が少しでもポンプ隊に止まっていてほしいからだと誰かが言っていた。  実際問題、ポンプ隊の構成は、二十代の隊員が全隊体にいるとは限らない状況で、中には全員四十代という隊も存在する。だから、救急隊員の資格を取得しても、すぐに正規の救急隊員になれるとは限らない。ポンプ隊員と兼務という場合がほとんどだ。翔一も御多分に漏れず、救急研修を終えて戻っては来たが、ポンプ隊員と救急隊員の兼務を任命された。
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