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 救急救命士とは、厚生労働省の認定する国家資格であり、看護師や介護福祉士が救急救命士ということもありうる。救急隊員とは、消防法で定める、救急に関する専門的な教育を受けた者に与えられる資格である。翔一は、救急隊員としての研修は修了したが、救急救命士ではない。これからは救急救命士の資格取得という目標に向かわなくてはならない身でもあるのだ。  下田はまだ四十代前半なのだが、頭は白髪に覆われている。真偽のほどはわからないが、これまでの苦労が祟ったのだというもっぱらの噂だった。身体つきは中肉中背痩。制服を着ていなければ、ごく普通の中年男だ。 「はい、ドキドキのわくわくっす」  自分でも頬が緩むのがわかった。拝命以来三年間、ポンプ隊員として過ごしてきた。念願がかなった今は最高の気分だった。 「ま、救命士ではないけどよ、世間様から見れば立派な救急隊員だからな」  そう、内部的には「見習い」であるが、住民から見れば救急隊員なのだ。翔一は小さく武者震いをした。 「がんばってくれよな、老いぼればっかりの救急隊じゃあ、かっこ悪くて世間様に申し分けねえからなあ。救命士だとかそうでないとかは関係ない。とにかく若い力が必要なんだよ、これからは」 「隊長、誰が老いぼれだって?」
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