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母は「なによ、本気でバイトするわけ? やめてちょうだい、働くなんてとんでもないわ、母さん、そんなことをされても全然嬉しくないし」と厳しい言葉を翔一に放った。が、翔一は、本音は嬉いのだ、心の底から反対しているわけではないのだ、話せばわかってくれるだろう、許してくれるだろうと楽観していた。
しかしそれは、自分の独りよがりだった。
「あなたは頭がいいのだから、ちゃんと勉強して大学に行くことが親孝行です。バイトはダメ。やめなさい」母は、人が違ったように反対した。
「でも、もう決めてきたんだ、出勤初日を迎えてから行かないなんて言えないよ。店に迷惑かけるだけだ。今日はとにかく行かなくちゃ。いいかげんなヤツだと思われたくないもの」
「あんたが今頃になってこんなことを言うからでしょう。行かなくていいよ、わたしからバイト先には説明しておくから」と、母は頑として許さなかった。
こうなっては翔一も「絶対行く」と意地になる。
行く、ダメだ、行くと何度か押し問答を繰り返したが、らちが明かなかった。
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