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 わかりました、救急車が向かいますと向こうから言われたところで、やっと終わったと安堵しながら、お願いしますと言い、電話を切る。実際には一分かそこらのやり取りだったのだろうが、ずいぶん長い時間話していたように感じた。大きく嘆息せずにはいられなかった。  母の様子を確認する。さっきと同じ姿勢だった。異臭に気付き母を見る。台所で吐いたらしい。うつ伏せのままぜえぜえと荒い呼吸をしている。 「母さんっ」  声を掛けると「うん」と声が返ってきた。まだ意識はある。「救急車、呼んだから」と告げた。「うん」とくぐもった声が返る。翔一は小さく溜息をついた。目頭が熱くなった。  これからは自分も働いて、少しは母にも楽をしてもらいたいと思っていたのに。世の中は思い通りにいかないものなのだなと思う。  時間の経過とともに、翔一は大分落ち着いてきた。頬を伝う汗を拭う。  まず、救急隊が来たら母を運び出さねばならない。翔一は、ダイニングテーブルをできるだけ壁際に寄せ、玄関の靴を片付けた。  しかしここはアパートの二階だ。階段もある。どうやって運び出すのだろうか。
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