0人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前、なんでそんなことも出来ないんだよ!」
「すいません」
僕たち班のリーダーはよく課長に怒られていた。
梱包材料の発注は忘れるし、仕事をすれば誰も間違えないような簡単な作業を指示書通りに作らないのでお客からクレームがきたりした。
その班に入って間もなく、リーダーに教えてもらう立場だったので彼のミスに関して黙っていた。
ミスは多いが仕事の技術に関しては唯一の先生だった。
そして三ヶ月経った頃には彼から教わることはなくなり、ノーミスで作業できるようになってリーダーのミスが目立つようになった。
「今日までに出荷する製品はこれとこれ」
森さんのいつもの丁寧な仕事と笑顔にほっこりする。
「分かった。ありがとう」こちらも自然と笑顔を返す。
僕の作業の前工程をしている森さんは美人で時折見せる笑顔がとても可愛かった。
初めはなれない僕の仕事ぶりに戸惑いがちだったけど、森さんとの呼吸も合っていき、いつしか互いに信頼できる存在となった。
森さんは一度も仕事を間違えるようなことはなく時折フォローに来るリーダーが彼女の一生分の間違いに僕はやっきりしていた。
「お疲れ様」「おつかれ〜」
半年経った頃には残業は効率よく定時で上がるのが当たり前になっていた。
僕がこの班に入る前は2、3時間の残業は当たり前だったのに今ではほとんど残業にならなくなった。
僕的にも残業することでお金になるけれど『ちょっとだけ残業しよう』ということを繰り返すと積もり積もり簡単に貯まってしまうものなのだ。
それが一時間、ニ時間となり挙げ句、日またぎ、休日返上、しまいには日雇いの海外の人達と大晦日と元旦を迎えたことがあった。
これを教訓にして早く帰りたそうな森さんに喜んでもらいたいのも相まって足を引っ張るリーダーをよそ目に僕はあらゆる作業効率のための工夫をして記録的生産数を打ち出した。
最初のコメントを投稿しよう!