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月日は一年が経ち、リーダーは相変わらず梱包ミスが多く、森さんも僕もリーダーが課長に怒られる度「しょうがないな」苦笑していた。
「今日、はやく帰らなきゃ」
「どうしたの、森さん?」
「子供の卒業式があるから…先に帰るよ」
と言ってそそくさと帰って行った。
森さんって中学生の子供がいるのか…。
彼女の後ろ姿を見て生活感が想像出来なかった。指輪もしてないし、男がいる雰囲気をまったく感じない。
多分、シングルマザーだろうと感じた。
とはいえ、森さんのこと全然知らないな。
もう一年近く一緒に作業してて仕事の話ばかりでたまに美味しいインスタントラーメンの話ぐらいなものだった。
僕はメールでやり取りすることで少しでも森さんと作業の合間に会話して楽しい時間にしたいと思ったのだった。
とは言うものの番号を受けてくれるだろうか?
「和田リーダーって森さんのことが好きみたい」
と真面目な顔をしての同じライン作業をしている原田さんは僕にそう打ち明けた。
「へぇ、そうなんだ〜」
僕はそんなリーダーをとても気の毒に思った。
若くして禿頭でいつも怒られてばかりで表情が薄く何だかもののけ姫の『顔なし』の様相で気味が悪く思える。女の子たちから失敗をやらかすたび苦笑されていた。
これでは森さんに相手にされないだろう、至極当然、それは自然なことだと思えた。
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