0人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日、森さんは、僕にまったく目線を合わせてくれなくなった。
そして、やけに、和田リーダーと仲良さそうに話をしていて、それは、不快で、いやな雰囲気だった。
「田端君。明日僕、森さんと一緒に朝早出するよ」と和田リーダー。
「はあ、そうですか」僕は自分の名前を忘れてしまいそうなほどショックだった。
森さんが早出をすることを承諾したのはともかくリーダーがそんなことをわざわざ僕に伝えてきたことが一番ショックだった。
そしていつもなら森さんに苦笑されていた側にいた彼の役割が今度は自分の方に回ってきた。
「また注文し忘れたな…」
そんな毎度のミスをリーダーに指摘すると森さんがキッと睨み『嫉妬ってイヤね〜』って感じでこちらをみた。
これには絶望を通り越して呆れた。
この人、僕が番号渡したことをよりによって和田リーダーに相談したのだろうか?
「森さん、これやっといて」「ほーい」
やけに仲良さそうに楽しそうに二人でいちゃついている。そしてリーダーのミスがあると僕にトバっちりがきて彼のケツを拭くのだ。
しかし以前とは違い、リーダーは森さんと仲良くすることで水を得た魚のようになって、まるでできる男のように表面的には映った。
では、今までは仕事出来ないっぷりの演技だったのだろうか?
ある日、昼休み作業台が汚れていて、それに気づいた伊藤さんが黙ってそこを拭いていた。
「そこ、和田リーダーが昼飯食べてところじゃん」
「…」
伊藤さんは大人しい人で周りからも『大人』で通っていた。
リーダーを注意している怒る僕は対象的に『子供みたい』と囁かれるのが聞こえた。
紐を切って束をはずし数枚ダンボールを持って行く際もリーダーは紐を捨てずやりちらかしていた。
それを誰も怒らず、僕も黙って片付けると自分のせいにされたりもした。
そうしたことにはもう怒りを通り越して呆れるばかりだけど、それはさておき、森さんにはせめて和田リーダーのデキるっぷりのしょぼい演技を見抜き、幸せな再婚が出来るようになれれば…とも思うのだ。
おわり
最初のコメントを投稿しよう!