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以上。
異世界に転移して弁当屋をはじめた俺の顛末。
いや、顛末というにはまだ早い。
俺の異世界弁当屋ははじまったばかりだ。
だが、今だけはゆっくりさせてくれ――。
「風呂ができたぞ! 温かいお湯につかれる風呂が!」
そこそこ溜まった弁当屋の儲けで俺は家の庭に個室風呂を建造した。
やっぱり、異世界転移したらお風呂を作るのが大正義だよね。
「とはいえ、井戸水を汲んで湧かしているんじゃ、入れる回数に制限があるよな。やはりどっかから水源を引っ張ってこないと」
石造りのドーム状になった浴室。
真ん中には檜づくりの浴槽。深さは膝の高さ。広さは軽く六畳間くらい。
外で温めたお湯がそこに流れ込む簡易な仕組みだ。
肩までお湯につかれるのはこの世界に来てはじめてだ。ついついテンションが上がった俺は、そのままどぷりと頭までお湯の中に潜り込んだ。
あぁ、温いお湯に身体がとろける――。
「ぷはっ! これだよこれ! これがお風呂の醍醐味だよね!」
「どれどれ? どれが醍醐味?」
「そんなはしゃいで、子供みたいやなジェロはん」
濡れた前髪を後ろに撫でつけて顔を上げる。
風呂の入り口。開けっぱなしの扉の前。そこに二人の美少女が立っていた。
一人は17歳とは思えぬナイスバディ。
赤いショートカットが愛らしく、お椀型の豊満な胸がたまらない。
俺の愛する嫁のミラ。
一人は、濡れ羽鴉のおかっぱ頭に狐耳。
イカ腹すってんどん。小学生か中学生にしか見えない合法ロリボディ。
俺の頼れる愛人のキャンティ。
二人は腕に手ぬぐいをかけて全裸で風呂場の入り口に立っていた。
うぅん――。
「二人とも、どうしてここに⁉」
「決まっとるやろそんなの!」
「なんか面白そうだから一緒に入りに来ちゃった!」
「入りに来ちゃったって!」
「別にええやないか、男女別に入る決まりなんてないやろ?」
「……しまった、ここは異世界だった」
お風呂は男女別という概念がないのだ――!
恥じらうより前に二人が浴槽に入ってくる。
ざぷんと湯船を揺らして中に飛び込むと、キャンティが左から、ミラが右から俺の身体を挟み込んでくる。
「ジェロ。このお風呂っていいね。一緒に入るといろんなことができそう」
「いろんなことって⁉」
「ジェロはん、もしよかったら身体を洗ったろか? しもた、海綿を持ち忘れた。これはウチの身体で清めるしかあらへんな!」
「風呂の文化が光の速さで進化している!」
「ずるいー! ペコリーノもはいるのぉ!」
「「「ぺ、ペコリーノだと!」」」
我が家の二大ロリに気を取られ、後ろに控えていたガチロリ(異世界でも案件)に気がつかなかった。
白いドレスを脱ぎ捨てた幼女がとてとてと床を駆ける。
金色のふわふわの髪が輝いたかと思えば、次の瞬間彼女は浴槽に飛び込んでいた。
そして、俺の胸の上に容赦なく落下する。
――ぐふぅ!
「ふわぁー、あったかぽかぽかなのぉ」
「ペコリーノ。入る時は、もっとゆっくり入ってね」
「はぁい! あっ、ぱぁぱのおしべさんだぁ!」
そんでもって迂闊なこと言わないで。
そりゃそうですよ。
肉体関係「アリアリアリアリアリーヴェデルチ!」の女性三人に一度に迫られたら、元気いっぱいになっちゃうのは仕方ありません。
「あら、本当」
「ジェロはん。こんなんなる前に言うてや」
「おしべさん、きょうもげんきですかぁ?」
三者三様の反応を見せる俺の女たち。
はたして、この関係をいつまで続けられるのか。
店が潰れるのが先か、女性関係が拗れに拗れて刺されて死ぬのが先か。
心臓に悪い異世界転移だ。
けれども――。
「お風呂はそういう場所じゃありません。はい、肩までつかってしっかり温まる」
「「「はぁい!」」」
俺に協力的な彼女たちとなら、意外とどうにかなるのかもしれない。
なんて楽観的に思うのだった。
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