118人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
「あん?」
急に小声になったせいでよく聞こえなかった。
聞き返そうとしたが、それより先にチョコの癇癪が爆発する。
彼女は地団駄を踏むと俺に向かってスタッフを構えた。
「うるさい! うるさい! うるさい! とにかく、アンタはクビなのよ!」
無茶苦茶だ。
こんな理不尽なパーティー追放あります?
立ち上がって止めようとした俺にチョコがブーツの底を向ける。
だが、そこは運動能力に劣る魔法使い。
彼女が蹴ったのはパーティーの荷物持ちではなく、「昼食の鍋」の方だった。携帯用の小さな鍋が激しくゆれて中身がぶちまかれる。
たき火が汁を浴びて灰色の煙を上げる。
代わりに俺の中で怒りの炎が燃え上がった。
「何するんだよチョコ!」
「あ、いや、その」
「ダンジョンの内での食事がどれだけ貴重か分かってるのか!」
「わ……わざとじゃないもん!」
「わざとじゃなかったら何をやってもいいのかよ! 俺をバカにするのはいい! けどな、こんな飯でも飯は飯なんだ! 粗末にしたらダメだろ!」
チョコは見た目はガキだが中身は大人だ。
最近は情緒不安定だが分かってくれると思っていた。
なのに、今日のチョコは「何か」が違った――。
「ア……アンタの料理なんてまずくて食べられないのよ!」
「なんだと!」
「私がどれだけ我慢して食べていたと思ってるの!」
「豆のスープなんて誰が作ったって味は変わらないだろ!」
「うるさい! うるさい! とにかくうるさい! もうアンタが作った『ゲロを煮詰
めたようなお昼ご飯』なんて食べたくないのよ!」
「……お前、いい加減にしろよ!」
最初のコメントを投稿しよう!