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「ハルちゃんたち、こっち席あるよ~。」
一人が大きな声で叫ぶもんだから僕の周りの生徒が一斉に僕を認識する。
「何食べる?俺たちが取ってきてやるよ。」
「いやいや、こっちはテラス席取ったからこっちの方がいいよー。」
ぎゃあ、またワイワイ集まり出した。
「だあ!!!昼飯食えねーじゃん!」
「ごめん、リョウくん、みんな。」
僕は一緒に来てくれたクラスのみんなに謝る。
「ハルのせいじゃないから。ほら、Ω専用席行くぞ。」
「う、うん。」
亮一は僕の手を引っ張って人だかりを抜け出して端にあるΩ専用席に連れて行ってくれた。
「ハルは、ここにいろ。俺がハルの好きなの取ってくるから。」
「えー悪いよ。」
「でも、ここ離れたらさっきみたいに囲まれるぞ。」
「そっか。じゃありょうくんと同じのがいいな。」
「俺が頼むのはハンバーグランチの大盛りだぞ。」
「えっ!じゃあ、僕はそれのハーフサイズで。」
「あいよー。ほんとハルは食わねーな。じゃあ、行ってくるから。」
亮一のおかげでみんなで楽しく美味しいお昼を取ることができる。
「なあ、みんな、ここの高校の授業ってついていけてる?」
山岸くんが不安な顔で尋ねる。
「全然。僕、ほんと普通の地元の公立中学通ってたし、高校受験とかまともにしてなかったから。」
僕は早々に白状した。
「和倉くんも?僕も似たような感じ。三浦くんは?」
「僕は私立中学行ってたからまあまあ分かるかな。」
と答えたのは、僕より少し背が低くてメガネを掛けている三浦くん。
「だったら、お手上げのところ教えてほしいな。」
僕は素直にお願いした。
「いいよ。でも勉強なら葉山くんの方がいいんじゃない?」
「リョウくん?」
「そう。都内で1、2を争う私立中学行ってたから。だよね?」
「まあな。」
「何でそんなこと知ってるの?」
僕は三浦くんに聞く。
「葉山のお兄さんと僕の兄が同じ学校で、葉山のこと、入学前に聞いてたんだ。で、その葉山のお兄さんってすごくて、「おい、三浦ペラペラ人の個人情報しゃべるな。」
いつも明るい亮一が不機嫌に遮った。
「ああ…ごめん。」
三浦くんが気まずそうに謝る。
「ねっ、ねっ、天才のりょういちさまあ!」
場を払拭するために僕は、わざと変な抑揚を付けた。
「このダメな僕に赤点逃れる方法教えて~!」
「ハル、目標低いぞ。」
亮一が突っ込むと山岸くんたちが笑う。
それで、亮一の顔もいつも通りに戻った。
話しながら食べているとお昼の時間はあっという間に過ぎて行く。そろそろ空いた食器を片付けようとした時、ちょっと先にある食器返却口にいる城之内くんの姿が目に入った。
彼は、こんなにたくさんいるαの中でも
特別なオーラを放っている。
僕だけがそう感じているのかな?
僕は何だか彼に吸い込まれるように駆け寄ってしまった。
「ハル!」
亮一が焦ったように後ろで僕を呼んだけど、城之内くんしか目に入ってない僕には聞こえてなかった。
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