僕は食堂でも囲まれます

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「あの!」 咄嗟に声を掛けたけど、その後何言うべきか分からなくて俯いてしまった。  しかも呼びかけた相手は城之内くんなのに、振り返ったのは城之内くん以外の人たちだった。 「どうしたの?」  背の低い僕に合わせて少し腰を曲げてその人たちは僕の顔を覗き込んだ。 「えっと、違うんです。えっと、」 どうしよう、また人が集まってきちゃう。いつの間にか城之内くんは、食堂を出ようとしている。 「えっと、また今度!」 僕はペコリと頭を下げて彼を追うことにした。 「あの!城之内くん!」 食堂を出て少しした所で追いつく。 今度は、名前を呼んだので振り向いてくれた。 「何?」 けど、帰ってきた声音は冷たくて表情は迷惑そうにしている。  同じ1年のSSクラスの人たちがそれを見ていて『もうちょっと愛想良くしろよ。』とか色々言っている。 「えっと、僕同じ1年の和倉っていうんだ。」 「だから?」 考えてみれば、人から冷たい態度を取られたことが生まれてこの方なくって、こういう時どうすればいいか、全然分からなくなる。  でも僕はこの彼に対する興味の方が勝って、なんとか言葉を紡ごうとした。 「だから…えっと、そのお友達になれないかな?」  なんとか笑顔を作って、伝えられた。  城之内くんはちょっとだけ驚いたような顔をした後、心底呆れたように言い放つ。 「何で俺なのか分からないけど、みんながみんなお前みたいなやつと仲良くしたいって思うわけじゃないんだよ。」 それだけ言って去ろうとした城之内くんを僕は引き際が分からなくて引き留める。 すると、彼は 「お前に寄ってくる奴なんて腐るほどいるんだから、そこから選べばいいだろ。それとも俺みたいなのもお前のこと好きになるようにしないと気が済まないわけ?」  僕は言われたことにびっくりして息が止まる。  周りは『ひどいやつ!』『冷血漢』とか城之内くんに言っていて、僕には慰めやら褒め言葉やらを言ってくれてたみたいだけど、何も耳に入ってこなかった。  城之内くんは、そんな騒ぎを気にすることなく自分の教室に戻って行った。  あれ?僕がここの学園に来た目的ってなんだっけ?  こんなにαが僕の周りにいるんだから、彼に構ってないで、他に狙いを定めなきゃ。  そう思うのに何でか彼に言われた言葉や取られた態度ばかり頭に浮かぶ。  今起きた事にショックを受けてるのに、だからと言って嫌いになったり、興味が失せたりしてなかった。 「あっ!ハルいた!勝手に走り出すなよ。」 「あ…リョウくん。ごめん。…と食器返してないや。」 僕が食堂に戻ろうとすると亮一は僕の腕を取って引き留めた。 「三浦たちがやってくれてる。」 「そう。後でお礼言わなきゃ。」 「それより何かあった?ますます顔白いぞ。」 僕は首を横に振る。 なのに、周りが余計な事を言う。 「ハルちゃんに超エリートαくんが暴言吐いたせいだよ。あとで締めとくから安心して!」 「えっ!?あ、いや、僕がしつこくしたせいだから!!彼は悪くないから!」 「そんなことなかったのに、ハルちゃんって優しいんだね。」 「そんな、ほんとのことだから。」 彼が悪者にならないよう必死になる。 「ハル、もうすぐチャイム鳴るから行くぞ。」 また人が集まりそうだったのを察して亮一が声を掛けてくれる。 僕は誰に対してか分からないけどペコリと頭を下げてから歩き出した。  Ω教室棟に向かっていくと段々生徒の数が減っていって次第にΩの生徒だけになる。 そうなると、あえて僕に注目する人は居なくなって人心地付けるようになった。 「ハル、もしかして城之内を追いかけたのか?」 ここに来るまで黙っていた亮一が口を開いた。 「う、うん。」 「何で?」 「え?」 「何であえて、追いかけるの?ハルに優しいαなんて他にたくさんいるだろ?確かにアイツはカッコいいαの中でも特別見た目がいいけどさー。」 「あ、何でだろ?人のことが気になるなんて初めてで、それがなぜか城之内くんなんだ。カッコいいとかそれだけじゃないっていうか…。」 「はぁ、まあいいや。ハルさー普通じゃない可愛さなんだから、あんま突飛なことするなよ。ハルが何にかすると学園中のαが騒ぎ出す。」 「何それ。」 亮一の言い方にクスクス笑う。 「もっと自分の可愛さに自覚持った方がいいって。」 うん、自覚あるよ。だから控え目に行動してたのに、はぁ、失敗だったなぁ。 「心配してくれてるんだね。ありがとっ!」  「ハ、ハルッ!ふいうち、上目遣いからの笑顔止めろ!俺をαにするつもりか!?」 「なんなの、それ。」  僕は口を抑えて真っ赤になった亮一が変な事言うのでおかしくって笑ってしまう。  お陰でショックだった気持ちが少し浮上した。
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