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僕は囲まれたくないんです
僕は、あれからあの食堂には、一ヶ月経っても一度も行ってなかった。
元々、Ω教室棟で出される給食のボリュームで十分だったし、味付けもさっぱりしてて僕好みだった。
亮一は、こちらの給食では物足りないらしく毎日食堂の方に通っている。
Ω教室棟と自分の寮との往復の毎日だと、αに会わないもんだなあ。
城之内くんの姿を遠目でもいいから見てみたいけど、もしばったり会ってしまって、また冷たい目で見られたら、と思うと勇気が出なかった。
あと、またαの皆に囲まれて、それを城之内くんに見られて、誰にでも好かれたい奴って誤解されるのも嫌だった。
放課後は、たまに亮一に勉強を見てもらったり、寮の皆んなで卓球やったり、ゲームしたりそれなりに楽しくやっている。
部活もあるらしいんだけど、体力ないし入るのを躊躇っていた。
「リョウくんいる?」
部屋にいない時は、寮の遊戯室にいるかと思い顔を出した。
「見てないよ。」
遊戯室にいた何人かが答えてくれる。
亮一はたまに放課後、夕食までずっとどこかに行ってしまっている時があった。
詮索する気はないけど、課題は明日までだから今日は捕まえて教えてもらわないとまずい!
携帯電話は、自室でしか使ってはいけないため、鳴らして呼び出すこともできない。
「もうどこ行っちゃったんだよぅ。」
ぶつくさ言いながら遊戯室を出ると寮長の鈴木先輩に軽くぶつかってしまった。
「すみません!」
「どうしたの?誰か探してる?」
寮長なだけあって、面倒見がいい。
「あっ、葉山くん探してて…。」
「ああ、葉山くんならよく図書館にいるよ。私も利用してるけど、結構見掛けるよ。」
そう教えてくれた鈴木先輩にお礼を言って、課題を手にしてから図書館に向かう。
初めて行く学園の図書館は、市民図書館並みに大きくてこの中を探すのかと思うと探す前から嫌になってしまう。
でもきっと勉強しているのだろう。亮一が勉強するとしたら、宇宙科学関係の蔵書がある近くだろう。
亮一の部屋には宇宙に関する本がたくさんあって、この間、理由を聞いたら、アメリカに行って宇宙関係の仕事に就きたいと話していた。
アメリカの方がΩに対する人権意識が高いし、宇宙関連事業の企業が山程あるそうだ。
うん、亮一と僕との志に雲泥の差がある。
見た目からしてもそうだけど、おそらく亮一はΩの特色がかなり薄いと思う。だから頭の作りも僕よりかなり良いと思われる。
まあ、遺伝子レベルの違いを理由に課題を逃れる訳にはいかないので、早々に亮一を見つけないと。
思った通りの勉強スペースに一人で勉強しているのが見えた。
僕に背を向けてるので、
「リョウくん、見つけた!」
と声を掛けながら肩を軽く叩いた。
「お前……。」
振り向いたその人はリョウくんじゃなかった。
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