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僕は学園一の可愛さです
東京近県ではあるが山の奥に設立された私立の男子中高一貫校、篠宮学園のオメガ高校生専用寮に入学式の前日に入寮した僕は、部屋の設備に改めて驚かされている。
オメガに配慮されているとあって、トイレ、お風呂、冷蔵庫、キッチンまで整っている上に一人部屋だ。おそらくヒートの時に籠れるようになっているのだろう。
この学園の年間の学費はとにかく高額だ。授業は、さまざまな分野の大学教授が頻繁に出張して行ってくれるし、ノーベル賞を取った世界の名だたる学者達もやってくる。当然授業は英語だ。
だから、ここに集まるαは優秀だけでなく、家が相当な金持ちだ。
そんな学園に容姿以外実に平凡、いや、平凡以下なオメガの僕が入学できたのは、ひとえにオメガ特別枠のおかげ。特別枠生徒は全て無料で入学できる。
名目はαとΩの相互理解を10代の内から深めるためらしい。
んー理由として実に弱いよね。
実態は、優秀なアルファがオメガと番うことでまた次の優秀なアルファが誕生する。
数の少ないオメガを集めることで次代のアルファを生み出す機会を設けるためだ。
まあ、いわばαとΩの婚活の場としている。
だから面接と遺伝子検査の結果だけで入学できるのだ。どうやらオメガ特別枠は政府の要請から始まったらしい。
そりゃ、日本に優秀なαが増えたら日本も安泰だよね。
そんな日本政府の思惑なんかどうでもいいんだけど、努力しても勉強いまいち、運動いまいち、体力なし、特別な才能なしの僕は将来、まともに就職なんてできないだろうから、特別優秀なα様をこの3年間でどうにか捕まえて、一生食うに困らない生活を手に入れるつもりだ。
荷物整理が終わった頃、寮に館内放送が流れる。新入生と在校生の顔合わせを行うらしい。
食堂に向かうため部屋を出ると隣の部屋の住人も出てきた。
「初めまして。」
僕は人好きのする笑顔で話しかける。
「は、初めまして!わあ可愛いい!」
そう言った彼は、一般的なΩには珍しい真っ黒な髪に拓真ぐらいの背があり、なかなかがっちりした体格をしていた。
んーでもなかなかのイケメン。
「ありがとう。僕、和倉春人っていうんだ。君も新入生でしょ?ハルって呼んでね。」
「あ、俺は葉山亮一。ハルよろしく!」
「うん、リョウくんよろしくね。」
「俺、まともに同じオメガの人に会うの初めてだよ。」
数の少ないオメガはなかなか同類に会う機会はない。もしかしたら、街中ですれ違っているのかもしれないけど、何があるか分からないから、普通は隠しているし。
「うん、僕もだよ。だからこの学園に入れて嬉しい。」
「あ、やっぱり?俺も俺も!オメガの友達作りたくってさー。αいっぱいいるけど、授業はオメガだけだし、気にしなければいいかなって。」
「だよね。」
ん?亮一は、αに出会うために入ったわけじゃないのか。
「初のΩの友達がハルみたいな可愛い子だなんてラッキーだな。」
「何言ってんの?僕ぐらいのなんてきっとこの学園にいっぱいいるよ。」
「えーーー!!Ωって芸能人以外もそんなに可愛いやついっぱいいんの!?」
って言ってたけど、食堂に行って見たらやはりそうではなかった。
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