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「ああ!ハルちゃんだあ!」
「はっるく~ん!」
顔と名前覚えられてる…。
わらわらと同級生のα達が集まってきた。
「こらーあんまり近づきすぎんなよー。ここでの時間は10分だけだぞ。」
担任教師が軽く注意をする。
彼らは教育されているのか絶対僕らΩに触れてこようとしないし、一定程度距離を保ってくれている。
クラスのほとんどが僕の周りに集まって、僕に色々質問をしてくる。みんな背が高いから、見上げる形になってしまう。
亮一は、弾かれたのか輪から外れてるらしい。
「ハルちゃんって好きな食べ物何?」
と質問され、
「うーん、ケーキとか甘い物かな。」
答えると、別の生徒が
「ほんと!?うちの家、洋菓子も扱ってるから、今度店から運ばせるよ。」
と言う。
また他の生徒から、質問される。
「趣味って何?」
「えっと、あんまりこれと言った物ないんだけど、旅行するの好きかな。」
「したら、ウチの沖縄の別荘おいでよー。」
「えーそれよりも、海外のリゾート施設経営してるから、そっちに来なよ。ハルちんなら、無料ご招待だよ。」
「だったら、うちは、国内外180ヶ所にホテルあるから好きな所好きなだけ泊まっていいよ。」
「うちは、プライベートビーチ持ってるよ。気にしないでのんびりできるよ。」
あははー何この世界。これ普通なの?さすがSSクラスの生徒たち。家柄も立派だ。この中の誰にしても安泰そうだなぁ。
ずっと見上げて話してるから、首が痛くなってついさすってしまった。ネックガードでさすれなかったけど。
それに皆んなが気づいて、前から順番にしゃがんでくれる。
この状態、写真撮影される新人アイドルみたいじゃん。
ふと顔を上げて遠くを見ると噴水の方を見ている生徒がいた。
横顔だけでも一際整っている顔立ちをしていて、背も他のαより高そう。光と水飛沫を浴びて、彼の髪はブルーブラックに輝いてる。
亮一が暇なのかその彼と話していた。
彼は少し笑った。
笑顔も綺麗だ。
僕は何となくその彼から目が離せなかった。
「はるちゃん、あいつ気になるの?」
僕は、ついボケっと見てしまっていた。
「あ、噴水綺麗だなって。」
彼に見惚れていたことを気づかれなくて誤魔化す。
「ふーん。まあいいや、でさー…」
結局10分間目一杯あらゆる生徒に質問攻めにされてしまった。
「今度食堂で、お昼一緒にたべよーね!」
「お前ぬけがけ!」
「ずるいぞ!」
ワイワイ言いながらみんな帰って行った。
αってもっと偉そうにしてるかも思ったけど意外に気さくだ。
「ハル大丈夫だった?」
「うん、色々質問されただけ。」
「すっげぇモテてたな。」
亮一がニヤリとする。
「これ、モテてるって言うの?」
「ハルに好かれようとαどもが必死になってただろ。」
「そ、そう?」
「ハルに媚びまくってたのが見てて爽快だったぞ。」
「えっ!?」
「まあ、気づいてると思うけど、俺、αにあんまいい思い出ないから、ついそんな言い方になるんだよなー。」
「亮一は、αに前から会ったことあるんだね。」
「ま、まぁな。だから、αと馴れ合う気はない。ここなら、Ωの教育もしっかりしてるし、同類いるし、家の方針もあって、入学しただけ。」
もしかしたら、僕がαと話してるのが不快だったのかも。心配になって亮一の表情を窺う。
「あっ、でもそれは俺の価値観だからハルは、みんなと仲良くやれよな。もちろん、俺が一番の仲良し前提な!」
そう、明るく言って僕の不安を払拭してくれる。
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