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 俺は美形でもないが不細工でもない(と思いたい)普通の顔に不釣り合いな、男にしては珍しく長い髪をしている。  後頭部のやや下辺りで結んだ長髪のゴムを解けば、ハラリと頬に掛かる黒髪。下ろすと腰を通り越してケツまであるっていうのは、我ながら苦労して伸ばしただけに感慨深いものもあるけど。  でも、俺の地味な顔じゃなー。長髪の無駄遣い(?)って感じ。  幼馴染は戯れのように俺の髪を梳くのが好きらしく、「癒してくれ」というのは、「髪を撫でさせろ」という意味だ。  当然だが、別に長髪にしたくて伸ばしている訳じゃない。俺だって自分の顔立ちが耽美とは無縁の造作だと自覚している。  そんな十人並みの男と自覚していながら髪を伸ばすなんて、ナルシストめいていて「いたたたた」って感じだ。でも幼馴染が伸ばせと言ったから伸ばしている。それだけだ。 「お前の髪はいつ見ても、いつ触っても、コシがあって艶やかで美しいな。黒々としてて真っすぐで、大和撫子じゃないか」 「髪だけ言えばそうかもしれませんね」
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