01

5/17
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
 友花里は生まれつき心臓が弱いみたいで、手術しないと死ぬ確率が高い。本当は今でも怖い。発作が来る度、俺は今度こそ友花里があの世に連れて行かれるかとヒヤヒヤする。  十歳までは保たないかもしれない。――そんな風に診断された妹の誕生日を迎える度、おめでたい事なのに命の刻限を示されているように感じて、俺も親も友花里の誕生日を「これが最後かもしれない」と思いながら真摯に祝う。  空さんの父親は大病院の院長で、器官系においては全国有数の医者で、母親も腕の良い内科医だ。俺は生まれてきた妹を喜んだのも束の間、重い病気の事を知って、空さんに相談した。 『空、どうしよう。友花里が…、』 『友花里ちゃんがどうしたの? 夜泣きがひどいとかはゆるしてあげなよ。まだ赤ちゃんなんだし、』 『ちがう。しんぞうが弱いんだって。どうしよう。しゅじゅつしないと治らないんだって。でもウチ、友花里を治せるお金がないって……』  小さな花屋。病院の近くにあるから見舞い用に買っていく客が居るので、客足は少なくない方だと思うけど、花というのは生活に余裕のある時でないと買ってもらえない。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!