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決して裕福じゃない桜庭家に、友花里の手術代を捻出するのはとても難しいのだと、母さんが哀しそうに言った。
『友花里ちゃん、しんぞうがわるいの? どんな風に?』
『おれにもよくわからない。お母さんが説明してくれたけど、何か生まれつきらしくて……』
医者夫婦の娘だが、流石に小一かそこらで病名だの症状だの判る訳がない。まして俺の説明もグダグダで要領を得ないものだった。
その日の夜、空さんは手っ取り早く親に訊いてみたらしい。友花里を出産したのも診断したのも真北総合病院だったから、カルテはある。
『お金だけあってもすぐしゅじゅつ、ってわけにはいかないみたい。ドナーていきょう、ってのが必要なんだって』
『ドナーって何?』
『死んだ後、ぞうきをあげても良いですよ、って生きてる間にそういう…ばしょ? きかん? にとうろくしてる人のことを言うみたい。わたしにもよくわかんないけど…』
『おれも出来る? そしたら友花里におれのしんぞう、あげられる』
『元くん、死んじゃうの? しんぞうがぶじな死に方しないとだめみたいだし、友花里ちゃんのために死んじゃったら、友花里ちゃんがショックだよ』
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