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「里帆……キスは初めて?」
「……ううん……大学生の時に」
失恋直後に告白をされてできた彼氏だ。友だちのような存在だった彼のことはちゃんと好きになれた。でも、亘の時ほど夢中にはなれなかった。
「そっか。悔しいな」
亘が再び近づいて、唇がふれる。
「ん、ん」
今度は二回くっついて、離れていった。
「あの告白を受けてたら全部俺が初めてだったのにな」
「そうだよ……亘くんのばか」
「ほんとだな」
会話の合間に何度もキスをする。
「これから、嫌ってほどするからな」
「嫌になんかならないけどね」
くすりと笑いあって、どちらからともなく唇を寄せ合う。
「ん……」
今度は深く重なるキスだ。さっきまでのキスよりも亘の唇の感触が伝わってくる。あたたかくて、少し硬い唇。
亘が口を開いて、ぱくりと里帆の唇を食べた。それから唇を舐める。
「んっ……」
「里帆。口ひらこ?」
「え……ぁ」
里帆は言われた通りに口を開いて見せた。すると、するりと亘の舌がもぐり込んでくる。
「んんっ」
口の中に入ってきた亘の舌は、里帆の咥内を丁寧に舐る。口の中に他人の舌が入っているのだと思うとおかしな感覚だ。鼓動が速くなっていくのを感じる。里帆はどうしたらいいかわからなくて、ただ亘にされるがままになっていた。
「……は、ぁ……」
舌が離れると、里帆はぼんやり亘を見つめた。
「どうした?」
「こ、このキスは初めて……」
里帆は自分の唇に手を置いて、顔を赤くする。初めてできた彼氏とは普通のキスしかしていない。年齢のわりに里帆はあまりに経験がなさすぎた。
「っ……里帆」
「んんっ!」
亘が我慢しきれなくなったように激しくかぶりつく。里帆の両頬を包み、またすぐに咥内に舌が入り里帆の舌を絡めとった。激しいキスをしていると唾液が溢れ、こぼれていく。亘はそれさえも舐めとっていく。大人のキスに眩暈がした。じゅ、と水音を立てて舌を吸われて、里帆は身体に力が入らなくなった。
唇が離れ、亘の胸によりかかる。
「ふぁ、ぁ、亘く……くるし……」
「鼻で息して」
そう言われてもうまくできなくて苦しくなるばかりだった。
「里帆、ごめんとまんない」
「え……」
顎を持ち上げ、またキスが降りてくる。
今までのキスを取り返すように、長い長い、深く味わうようなキスをした。
「も、だめ……」
「……続きは、場所を変えようか」
ぼんやりするなか、甘い囁きが聞こえた。
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