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「ああごめん違う。恋人気分を味わうってこと」
亘が慌ててフォローを入れても里帆はまだ呆然としていた。
「わかんないけどさ、今よりはアイディア出てくるんじゃないか?」
亘の言っていることも一理ある。ラブグッズを使う必要はなくて、恋人気分を味わうだけでも変わってくるかもしれない。最近そういう感覚はすっかり忘れているし、いいかもしれないと気持ちが傾く。落ち着いてきた里帆はもう一度ベッドに入った。
「使う人の気持ちを知りたいんだったら、効果があるかわからないけどとりあえずやってみるしかないんじゃないか?」
説得力のある言葉に、里帆はうなずいていた。
「そっか、そうかもしれない。……でもいいの?」
幼なじみだからといって、面倒見が良すぎる。仕事の邪魔になったり、亘に恋人ができるチャンスも逃してしまうかもしれないのに。
「いいよ、今のところ彼女作る気ないから」
「……そっか……」
「仕事忙しいし」
「無理しないでね」
亘の仕事の邪魔にはなりたくない。いくら幼なじみだからといって、甘えすぎている自覚はある。
「してないよ。里帆がカウンセリングルームに来た時、すごい疲れてるなって思ったから、力になりたいんだ。いいだろ?」
そんな言い方をされたら甘えたくなる。様子を見ながら、亘に甘えてもいいかな、という気持ちになっていた。
「亘くん、ありがとう」
「いいよ。ほら、安心して今日はもうおやすみ」
「ん……おやすみなさい……」
優しい手が里帆の頭をそっと撫でる。心地よさに目を閉じると、すうっと眠気がおとずれてそのまま沈んでいく。
「よく、眠れますように」
優しい声が、聞こえた気がした。
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