02 カウンセラーは幼馴染み

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「悪い、時間なくなっちゃったな」  里帆も時計を確認すると、あと五分で三十分が経過してしまうところだった。スケジュールを見る限り彼の一日は多忙なので、延長するというわけにもいかない。空欄のままのアンケートを渡してソファから立ち上がった。 「ううん、久しぶりに亘くんと会えてうれしかったよ。アンケートは途中なんだけど、また来るね」 「また俺のいる時に一時間の予約を入れてくれると助かる。あーそうだ、今日夜予定あいてたら飯どう? 金曜だし、ゆっくり話したい」 「行きたい!」  仕事のことなど忘れて反射的に答えていた。 「でも残業になったりするかも」 「いいよ。どうせ俺は今日七時までだし、待ってる」  里帆の定時は六時だ。残業をするとしても一時間で帰れるだろう。それならちょうどいい。 「その時に話せるようだったら軽く話してよ」 「うん、ありがとう」 「じゃあ、仕事がんばって」 「亘くんもね」  手を振って、カウンセリングルームを出た。やっぱり出口は違うところにあり、受付を通ることなくエレベータールームへとたどり着いた。  里帆は思わぬ再会に心を躍らせていたが、自分のデスクに戻るとすぐに悩みの種を目の前にして長い長いため息を吐いた。  その日はとりあえず新プロジェクトに関する資料作成と会議設定をして、午後を乗り切った。アイディアを出そうにもデスクの上にあるラブグッズを見るだけでもそわそわとしてしまうのに、自分に考えられるのだろうか。
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