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青天の霹靂
これは私が゛リトル・ライオン・レジデンス゛へ転居する前のお話 ―――
いつもの様に玄関の引き戸を開けながら『ただいまぁ』と学校から帰宅した時。
玄関の三和土にあまり見慣れないちょっとお高そうな男物の靴が二足と女物のハイヒールが一足、並んで揃えてあるのを見て、
『へぇ、お客さんなんて珍しい』と思いながら、自分も靴を脱いで上り框に足を乗せたその時、リビングの方から珍しくナツさんに声をかけられた。
『お帰り、絢音。ちょっとこっちへ来てちょうだい』
《バイトの給料日でもないのに何の用だろ……》
場面変わって、こちらはリビング――――
和泉家がまだ羽振りが良かった頃、ナツさんが見栄を張って特注で購入したスウェーデン製の応接セットのソファーの上座に当たる所に、祠堂の大学院に通う先輩(数回、学園祭で会った事がある程度なので名前は不明)とそのご両親らしい一組の初老の紳士とナツさんより一回りくらいお若い上品な女性が座っていた。
その方々はナツさんにとってかなりの上客なのか?
テーブルにはウェッジウッドのティーカップセットに香り高い紅茶が淹れてあって。
お茶請けは地元・葛飾にあるpetit magasin Kazamaの〝あまおう″を使ったイチゴのスペシャルショートケーキだ。
お客さんの応対にあたっているのは継母・和泉 ナツさん。
ばっちりフルメイクで先日、銀座丸越の外商で購入したと言うルイヴィトンのセットアップスーツを着込んでいる。
室内に入った私の姿を見て先輩とご両親が立ち上がったので、ナツさんも慌ててそれに倣ってから、
「絢音、こちらは深大寺 虎河さんにご両親の深大寺 虎造さんと涼香さん」
《深大寺……世相に疎い私でもその名前くらいは聞いた事がある。
政商として悪名高い深大寺虎造。人呼んで〝Mr.グレー″ そんな大物が一体
私に何の用?》
それから、30分ほど滞在の後、深大寺さんの『じゃ、絢音さん、色良い返事を期待しているよ』と言う言葉を残し深大寺親子は去って行った。
※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
先輩がご両親まで伴って我が家を訪問したのは、何と!!
私へ結婚を前提とした交際を申し込むためだった。
ナツさんはお父さんへの相談もなしに、両手を挙げての大賛成だったけど、流石の私もロクに面識のない先輩との真面目な交際を即答する事は出来なくて、正式な返答は後日に、と言う事で今日はお帰り頂いた。
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