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無論、傷害事件として警察は動き、一味は全員捕まっている。
光希は青葉の話を聞いて、同情を禁じ得なかった。
だが、一徹は治療の甲斐もあって回復し、リハビリに耐えて日常生活を取り戻したのだ。
「田麦君の身に、そんなことがあったなんて知らなかった……」
光希は驚きを隠せない。友達では無いにせよ、クラスメイトにそんな凄惨な過去があったことに。
青葉は話を続ける。
一徹は、以前のような元気を取り戻しつつあった。
だが、以前のように笑うことはなかった。いつも何か考え事をしているような難しい顔をしていた。
「それから一徹は、打撃技に興味を持った。というより、実践し始めたんだ。柔道には打撃技が無いからな」
光希は、なるほどと思った。
柔道は投技、固技、絞技、腕に対しての関節技となっている。
だが、全くない訳ではない。
当身技はあるが『型』にあるのみで、危険として試合では完全に除外された。武道としての実戦性を排することで、スポーツとしての柔道は安全性を獲得し、広く普及していく事となった。
だが実戦を考えれば、打撃技は必要だ。
投技、固技、絞技、関節技などの組技は、相手との距離をゼロにしなければ使うことはできない。対して打撃技は相手との距離をおいた状態で使用できる。
戦闘における距離は非常に重要性がある事柄だ。武器というものは、間合いが長い程、有効的だ。間合いが長いということは、安全圏から相手を攻撃できるということになる。
素手に対し剣を持つ者が有利。
剣に対し槍を持つ者が有利。
槍に対して弓を持つ者が有利。
という具合になる。
一般にスポーツとして確立した格闘技は弱くなると言われている。
柔道の投技は相手が丈夫な柔道着を着てくれているということを想定して作られており、技の大半が相手の道着を掴んでから初めて威力を発揮できる。
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