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また、古の空手は一対一の素手の勝負ではなく、一対複数の戦い、あるいは武器を持った相手との戦いも想定した格闘技ではなく武術であったことから考えれば、サンドバッグやミット、パンチングボールと言った、『サシで素手で殴り合う』ために必要なトレーニングは、必要ないの一言で切り捨てていいものとなる。
ではマキワラ鍛錬の目的は『拳を鍛える、固くする』ためなのか?
無論、巻藁を殴らないより、殴った方が拳の皮膚は鍛えられる。
しかし、拳自体を鍛えるためには、殴る力をすべて受け止め、逆に拳に向かって反作用を叩き返していくくらいの質量・硬度を持ったものが必要となるはずだ。巻藁のように、柱のしなりによって殴る力が抜けてしまうものは、拳自体を鍛えるという目的を果たすには、造りが弱いように感じられる。
ちなみに、巻藁による鍛錬は、江戸時代後期に「武士(ブサー)松村」こと松村宗棍が、薩摩示現流の立木打ちをヒントに考案したとされており、「手(ティー)」の修行方法としては比較的歴史の浅いものという。
その為か、様々な意義があるが、代表的な2つの意義がある。
一つは正拳そのものの鍛錬。
突くことで拳頭が固く強くなり、手首が鍛えられる。素手で殴った場合、手首にかかる負担は大きい。
15年間不敗の柔道家・木村政彦(1917~ 1993年)が自伝のなかで、手首を鍛えるのに巻藁突きをしていたというものもある。
もう一つは、実際に当てた時に感じる反作用に対して自分の身体がどう対応するのか、ということを体感する、
ということが挙げられる。
特に、この2つ目が重要だと思われる。
突きの威力の2/3は強靭な下半身から生み出される。
つまり巻藁突きとは、拳の強化もあるが、主に下半身の強化を目的とした鍛錬。
上半身よりも下半身の方が重要だという考え方から来ている。
上腕二頭筋や三頭筋などの力こぶを作る筋肉よりも、大腿四頭筋などの太股の筋肉を強くする方が重要なのだ。
だが、一徹は知らなかった。
ゆえに上半身の筋力も鍛えてしまった。
肥大した筋肉を魅せるビルダーと異なり、格闘技において筋肉を付け過ぎはデメリットになる。不要な筋肉を付け過ぎるとフォームが崩れてしまったり、フットワークが鈍重になってしまったりするなどの問題が生じる危険性がある。
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