男一徹 力愛不二

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 一徹は、強さに自信を持っていた。  思えば、この時が人生における最高の瞬間だった。  そして、一徹は喧嘩で負けた。  街中で不良にイチャモンをつけられたのが、喧嘩の切欠だった。  そして、逆にボコられた。  相手の服を掴む前に、パンチが顔面を襲った。  初めて受けた攻撃だ。  柔道では、打撃など反則だ。  だからと言って、引き下がれずに、何度も挑んだ。  それでも勝てなかった。  やがて一徹の心には、敗北感だけが残った。  自分が弱かったことを知った。  もう、柔道はできないと思った。  それなのに…………。  どうして俺は、まだ立っている!?  どうして俺は、まだ戦っている!?  どうして俺は、まだ生きている!?  一徹は理解できなかった。  自分の心の変化が分からなかった。  ただ一つ言えることは、今の自分に満足していないということだけだ。  一徹は、もう一度戦うことを決めた。  それは生きるためではなく、強くなるために。  今度は勝つための手段を選ぶつもりはない。  卑怯でも何でもいい。  必ず勝ってみせる。  そのためなら何だってやってやる。  たとえそれが、どんな代償を払うことになったとしても――。  朝のHRが終了し、授業が始まる前の少しの休憩時間が訪れていた。  少年は、椅子に腰掛け、腕組みをして沈黙を行っていた。  まるで教室の中に、石像が置かれているような威風堂々としたものがある。  体格の良い少年だ。  痩せすぎず、太りすぎず均整のとれた肉体は、無駄な贅肉など一切ない。  だが、鍛え上げられた筋肉の上に、引き締まった脂肪を纏っているため、細マッチョ。
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