男一徹 力愛不二

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 一徹は言うが、男は聞く耳を持たなかった。 「ダメに決まってるだろ。これから楽しいデートなんだからよぉ」  そう言って、少女の首筋を舐める。  その行為で、完全に頭に血が上った一徹は、思わず飛び掛かろうとした。  だが、一徹よりも先に動いた人物がいた。  青葉である。  彼は素早く、少女の腕を掴むと自分の方へ引き寄せる。そのまま抱きかかえるようにして庇い、少女の盾となった。  しかし、怒りに任せて飛び出した為、どう対処するかまでは考えていなかった。 「なにしやがる!」  男は激昂し青葉は頬を殴られ、吹っ飛んだ。  青葉は少女に叫ぶ。 「逃げろ!」  少女は恐怖で足がすくんでしまって、すぐに動けなかったが、青葉の声を聞き、我に返って走り出す。  男は少女を追いかけようとするが、その前に一徹が立ち塞がる。  男の目は殺気立っており、今にも襲いかかってきそうだったが、一徹は一歩たりとも引かなかった。  ここで退いたら、二度と自分を取り戻せない気がしたからだ。 「どけよテメエ。殺すぞ」  男は凄みながら脅す。  だが、一徹は退かない。 「面白い。やってみろ」 「やってやろうじゃねえか。オッサン」  一徹は挑発し、男は大きく舌打ちをして、拳を振り上げ――。 「俺はオッサンじゃねえ! 中学生だ!!」  一徹は男の顔面に拳を炸裂させた。  腕力に頼った手打ちの突きではない。  光希に言われた、突きのコツ。  腰を落とし、背骨を中心にして体幹を回転。  軸足の踏み込み。  拳に体重をしっかりと乗せる。  腰を回しながら拳を突き出す。
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