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思わず一徹に聞いてしまった。
もし、一徹の口から否定の言葉が出れば、それはただの思い過ごしだと安心できる。
だから訊いた。
「一徹さぁ。先輩から聞いたんだけど、最近の新入生って挨拶できない奴が多いんだって」
青葉は、気さくに話しながらも覚悟の瞬間を待つ。
一徹。
お前は、どう答えるんだ。
頼む、普通の言葉を聞かせてくれ。
願うような、祈るような思いで待つ。
肯定とか否定ではない。
反応を見たいのだ。
一徹は、舌打ちをした。
「まったく。最近の若いモンは……」
オッサンみたいなセリフを吐く。
青葉は顎が外れかねないような衝撃を受けた。自分達も中学2年であるにも関わらず、なぜにそんな言葉が出るのか分からなかった。
だが、まだだ。
まだ終わっていない。
もしかしたら何かの勘違いかもしれない。
もう一度確認しなければ。
青葉は身体の骨が折れた様な感覚に抗い、下肢に力を入れて立つ。
「そ、そうだ。クラスの佐京と日下ってさ、結構仲良いみたいだって。この間も、放課後の教室に二人っきりで勉強してたんだって。
あいつら、付き合ってるのかな……。あれ、こう言うのって何て言ったっけ?」
青葉は必死になって、一徹から言葉を引き出そうとする。そのせいか、自分でも言葉が棒読みに近い状態になっているのが分かった。
ある意味、あからさまな言葉だった。
一徹は答えない。
青葉は、失敗したかと思った。
それでも、一徹の反応を待った。
一徹の口が動くのが見えた。
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