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青葉は安心――。
「アベック(死語)だろ」
また、オッサンのような返事をする。
青葉は、安心が崩れ去った。その場で絶望したように両膝と両手を床に叩きつける。
叩きつける?
いや、地球の重力が10倍になったかのように身体全体が重い。
そのまま四つん這いの姿勢で倒れ込んだ。
クラスメイト達は、突然の事態に驚きを隠せない様子だ。
もう、ダメだ。
決定的だった。
一徹は、完全に見た目も、中身もオッサンになっていた。
しかも、自分が知らない間に、オッサン化が進行していたのだ。
青葉は、泣きそうな気分になった。
だが、なぜこんなことになったのかと疑問を抱く。
そこで、ふと思い出す。
一徹には、ある秘密があることを。
誰にも言えない秘密があることを。
その秘密のせいで、一徹は変わっていったのではないか。
青葉は、その可能性に賭けた。
放課後に青葉は、クラスメイトの少年に話しかけた。
やせ形のオーバル型メガネをかけた少年。
小ぶりで丸みのある形状のメガネをかけているためか、落ち着いた優しい印象がある。取り立ててカッコよくない目立たない男の子ではあったが、素朴で温かく、日差しを受けて香る土の匂いが伝わってくる。
そんな、少年だ。
名前を、佐京光希と言った。
「田麦君が変?」
光希は、少し驚いた顔をした。
クラスメイトではあるが、友達と言える程、親しい訳ではないので反応は鈍い。
それでも、同じクラスメイトということで、少しだけ興味を持ってくれたようだ。
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