男一徹 力愛不二

6/42

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
「そうなんだよ。何て言って良いのか……。オッサン化しているんだ」  青葉に言われて、光希は考える。  オッサン化とは、どういう意味だろうか。  一徹は、確かに最近変わったと思う。  少し前までは、明るく、冗談を言うことが好きだったはずだ。  それが今では、無口になり、笑わなくなった。  そして、どこか暗い影が差しているように見える。 「言われてみれば、何か変だよね……」  光希は考える。  上を見る。  下を見る。  腕組みをする。  目を閉じる。  じっくりと考える。  優に1分は考える時間はあって、光希は口を開く。 「あれ? 田麦君ってさ、中1の時、どんな顔してたっけ?」  光希は、一徹の顔を思い浮かべようとした。  中学生の柔道66kg級で日本一になったので、新聞記事で顔を見たことはあったのだが、記憶がない。  いや、今の記憶と一致しないというべきか。  記憶の引き出しを開けるため、思考を集中させた。  それでもなお、思い浮かばなかったのだ。  クラスメイトの顔が。  一徹が、どんな顔だったか。  全然、思い出せなかった。 「どんなって。そりゃ、椅子に腕組みして石仏みたいにデンって……」  青葉は今のイメージで口にし、言葉が続かなくなる。そういえば、一徹の中1の頃の顔が分からないことに。 「図書室に行ってみない。クラスの集合写真のアルバムがあるはずだよ」  光希の提案に、青葉は同意する。  一徹のオッサン化の真相を知るために。  二人は、学校にある図書室に向かった。  放課後ということもあり、静まり返っている。  青葉は、図書委員の女子生徒に声をかける。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加