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光希は、少し不思議そうな顔をしている。
青葉は、一徹がオッサン化してしまったことについて、昔なじみの友人ではない光希に相談したからだ。
しかし、このことに関しては、あまり人に言いふらすようなことでもない。
だから青葉は、言葉を濁す。
すると、光希は察した。
「田麦君の変化について、何か思い当たるフシがあるんだね」
光希は核心を突く。
青葉は黙ったままでいる。それが答えだった。
「そうなんだ。これは、一徹の名誉にも関わらることだから、誰にも言わないでくれるか?」
「安心して。僕は口が堅い。約束する」
光希は真面目な表情で言う。
青葉は光希とは友達ではなかったが、光希の誠実さは知っているので安心した。
「一徹が、柔道の全国大会で優勝した件は知っているよな」
青葉の言葉に光希は無言で頷く。
柔道部である一徹は、中学1年の時、全国大会で優勝して一躍有名になった。
学校でも盛大に盛り上がり、地方のローカル放送、新聞とメディアの取材もあったので忘れようが無い。将来はオリンピック候補ではと期待されている程だった。
「その後に起こったんだが、実は一徹の奴、街中で不良とケンカしたんだ。喧嘩を売られたらしいんだが……」
そこで言葉が詰まる。
光希は何があったのか想像がつくだけに、口にするのが憚られるのだ。
青葉は続けた。
それは、あまりにも酷いものだった。
相手は6人の不良で、高校生ながらにタバコを吸うなどしていて、とてもタチが悪い連中だった。
一徹は立ち向かったのだが、多勢に無勢、ボコボコにされてしまった。病院に運ばれ入院したが、全治2週間の怪我を負った。
一度は寝たきりになってしまったのだという。傷害事件による外傷の後遺症が原因だと医者からは言われたそうだ。
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