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目覚めればそこは知らない天井で、起き上がったあたしはカーテンから僅かに漏れる日差しに目を細めた。
部屋の中は静かで、誰も居ないのかと思ったその時、この部屋より遠くドアが開く音がした。
足音が近づいてきて、部屋のドアが開いた瞬間、知らない顔の男が現れた。
「あ、おはよう。よく眠れた?」
寝起きでまだボーッとする頭ながらに必死に考えるけど、何でここにいるのか、よく思い出せない。
何かを買ってきたのか、ビニール袋からガサガサとテーブルに取り出しながら笑顔を向けてくるその男。
「……誰……?」
あたしが呟くのを聞いて、男の動きが止まった。
「あー、っと、知らないんだっけ? 俺の事」
眉を目一杯下げて悲しい顔をしつつ、男は一度キッチンへと向かうと、すぐに戻ってきて手にしていたレモンサイダーのペットボトルを差し出してくれた。
「はい、冷たくて美味いよ」
笑顔を向けられて、あたしは警戒しつつもペットボトルを受け取った。
「あー、そんなビクビクしなくても大丈夫だよ。昨日も酔っ払って寝ちゃったまどかちゃんには、何もしてないから。安心して?」
落ち着かせる様にあたしに言って、自分の分のレモンサイダーを口にする男から、レモンの爽やかな香りの中に、ほんのり甘い香水の香りが鼻を霞める。
「あたしの名前……知っているの?」
不安に思って聞くと、傾けたペットボトルと一緒に視線をこちらに向けた男は、またニコッと笑う。
「知ってるよ。同じ大学の山辺まどかちゃんでしょ?」
「……え、同じ……大学?」
こんな人居たかな?
「あー、その顔。今、こんな人居たかなって思ったよね?」
眉を目一杯に下げながら苦笑いをする男に、あたしは心を読まれたと焦る。
「仕方ないよね、まどかちゃんは順平にしか興味無かったし」
拗ねるように言われて、あたしは順平の名前を聞いて、昨日のことを鮮明に思い出した。
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