17.もう一度

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ついに幻聴まで聞こえるようになったのかと、慧は眉間を押さえて再び歩き出す。 「慧くん!待って!」 手を握られてようやく、これが夢でも妄想でもないことが分かった。 「比奈……さん……」 「ハァッ、ハァッ……ひどいよっ……慧くん、呼んだのにっ、無視しないでよ!」 目の前には息が上がっている比奈乃がいた。 「ごめん!だって、俺の幻聴かと思って……」 「幻聴じゃないよ。夢でも、妄想でもないからね?」 慧の考えていることなどお見通しらしい。 比奈乃は慧と握ったままの手を見せてニコッと笑った。 しかしそこから一転、険しい表情になる。 「慧くん。私は正直、すごく怒ってます」 「……はい」 「とりあえず一発殴らせてほしいんだけど。いいかな?」 「はい……もちろんです」 それで許されるとも思っていないが、殴るでも蹴るでも罵るでもいい。 何でもいいから比奈乃の気が済むまでやってほしかった。 罰は全て受ける覚悟だ。 ドラマでよく見る強烈な平手打ちか、あるいはゲンコツで腹パンチか。 殴ると言って、ミドルキックなんて可能性もある。 慧は衝撃に備えて目を閉じた。
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