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1.成田慧という男
AM6:00
カーテンの隙間から柔らかい外の光が入ってくる、気持ちのいい朝。
ベッド横のナイトテーブルに置かれたスマホがピピピピッと音を鳴らす。
毎朝このシンプルなスマホのアラームで松下比奈乃は目を覚ます。
愛しい同居人は比奈乃を抱きしめたまま、隣でまだスヤスヤと寝ている。
彼を起こさないようにそーっと手を伸ばし、比奈乃はなんとかアラームを止めることに成功した。
せっかくのダブルベッドを広々とは使わず、2人はいつもこうして真ん中でくっついて眠っている。
比奈乃は彼の腕を自分の体からゆっくりと離し、ベッドから抜け出そうとした。
「んん……まだだよ」
そんな比奈乃を、男は寝言を言いながら布団の中に引き戻す。
まだ完全に覚醒していないはずなのに、その腕力は比奈乃の力ではびくともしない。
「慧くん起きてー!私会社行かなきゃいけないから離してくれないと困るよ!」
「……わかった。でもちょっとだけ充電しちゃダメ……?夜まで会えないから比奈さん不足で俺死んじゃう」
比奈乃はこの誘いにとても弱かった。
190センチ近いすらっとした体格に童顔というこのギャップ。
おまけに甘え上手な性格に、比奈乃の母性本能は毎日くすぐられまくりだ。
「・・・わかった。時間ないから本当にちょっとだよ?最後まではシないからね?今日こそ約束だからね?」
「分かってる分かってる」
なんだか、毎度同じようなセリフを言って、同じようなセリフを聞いているような気がする。
そんな彼女をよそに、彼は彼女の体に手を滑らせながら首筋に唇を這わせていった——。
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